新型コロナウイルスの蔓延により企業は働き方の変化を迫られています。働き方が変わると課題になるのが人事評価制度のあり方です。どのように人事評価制度を変えていったら良いのか悩んでいる企業も多いと思います。そこで今回は、コロナ時代の人事評価制度のあり方・作り方について解説します。
目次
新型コロナウイルス感染防止に伴い、働き方に変化が求められています。例えば変化として次の3点があります。それぞれ説明していきます。
2020年4月7日の緊急事態宣言が出された後、新型コロナウイルスの感染を防止するために、出社しなくても業務ができる従業員は在宅で働くようになりました。緊急事態宣言が解除され、国内移動が認められるようになっても、在宅やカフェ、サテライトオフィスなどで働くリモートワークの流れは変わらないことでしょう。
新型コロナウイルス感染防止のため、時差出勤が進むようになりました。特に都内や大都市圏では通勤電車・バスの混雑を緩和するために時差出勤を推進。早朝に出社したり、遅い時間に出社したりして、混雑を避けて出退社するように変わっています。時差出勤の流れも、リモートワーク同様に進んでいくことでしょう。
リモートワークを進めるにあたっては、業務のオンライン化により効率的な働き方を進めることが求められるでしょう。Web会議、Web採用、Web研修など、従来はアナログで行っていた数々の業務がオンラインに置き換えられる可能性があります。業務のオンライン化はリモートワークの活用を促進していくことでしょう。
以上のように、新型コロナウイルス感染防止のために従業員の働き方は大きく変わってきています。
新型コロナウイルス感染防止のため、従業員の働き方が大きく変化したことを説明しました。しかし、従業員の働き方が変わると、人事評価を行う管理者は不安を抱きます。どんな点に不安を抱えるのかについて解説しましょう。
従来、管理者は常に部下と一緒にいました。そのため、管理者は部下の勤務態度や行動などから人事評価することができたのです。しかし、リモートワークで在宅勤務をしている従業員の勤務態度は見えません。また、従業員の成果につながる行動を見ることも難しくなることから、リモートワーク下において、管理者は人事評価がやりづらくなることを懸念しているのです。
部下の勤務態度や行動が見えなくなると、たとえ成果が出たとしても、部下が成果に対してどれだけ貢献したのか、管理者が判断することができなくなります。判断できなくなった管理者はどうなるでしょうか?人事評価が雑になったり、成果だけを見て判断したりすることになります。
成果だけを見て判断すると、経済や政治、法律といった外部環境、あるいは社内体制の変化といった、従業員自身の力ではどうにもならない外部要因も考慮せずに評価することになります。成果だけで判断すると、部下のモチベーションが大きく下がるリスクをはらんでいるということができます。
リモートワークになった部下とコミュニケーションを取る時、電話・メールだけでなくWeb会議という手法もあります。Web会議を使えば部下の顔を見ることができますが、一方で相手の表情まで読み取ることは難しいです。
人事評価項目に従業員のコミュニケーションに関するものがあると、管理者はWeb会議による打ち合わせによって、どのように従業員を評価して良いのか戸惑ってしまいます。対面時に比べると部下とコミュニケーションが取れなくなることで、人事評価に迷いが生じ、結果的に正しい評価ができなくなることが管理者の不安として挙げられます。
新型コロナウイルスと共存し、あるいは事態が収束した後のアフターコロナの時代を迎えた時、どんな人事評価制度が求められるでしょうか?従業員の働き方の変化や管理者の不安などから紐解いていきます。
対面のコミュニケーションが可能であったコロナ以前においては、成果を上げるための行動や勤務態度を評価してきました。つまり成果を上げるためのプロセスを評価してきたのです。しかし対面でのコミュニケーションは難しいですから、プロセス評価が難しくなります。
一方で、プロセス評価ができないとなると成果だけで評価することになり、従業員のモチベーションが下がるリスクがあります。従って、コロナ時代にあってもプロセス評価を避ける訳にはいきません。
コロナ時代の人事評価制度は、Webツールを使いながら管理者と部下の間で頻繁なコミュニケーションができる仕組みを取り入れる必要があります。期初に目標を設定しつつも、従来の半期ごとの面談ではなく、頻繁に面談を行う必要があるでしょう。面談といっても、必ずしも評価をする必要はありません。
例えば、頻繁なコミュニケーションを行える手法として、1on1ミーティングがあります。これは、管理者と部下が1対1で話し合いの機会を設ける場ですが、評価に重きを置くのではなくコミュニケーションの機会として用います。話し合いの中で管理者は、部下の成果に繋がる行動を把握していきます。リモートワークにおいては、勤務態度は把握できませんので、評価基準から外す方向で考えましょう。1on1ミーティングはWebで実施します。
1on1ミーティングの実施頻度は、リモートワークの場合はこまめに行った方が良いですね。1週間ないし10日に1度などの頻度で頻繁に行い、フィードバックを与えていきたいところです。1on1ミーティングで部下の成果に繋がる行動を把握したら、管理者は半期ごとの人事評価に活かしていきます。つまり1on1ミーティングによってプロセス評価を行っていくことになるのです。
コロナ時代の人事評価制度は、成果を中心に評価していく人事評価制度になります。部下の働き方を管理者が見ることができない中では、部下が提示してくるアウトプットを評価することに重きを置くようになるでしょう。
最後に、コロナ時代の人事評価制度をどのように作っていったら良いのかについて解説します。
リモートワークが当たり前の働き方になると、人事評価制度の評価基準を見直す必要が出てきます。人事評価制度の評価項目には、業績・能力・情意評価の3つがあるといわれています。この中で情意評価とは、部下の勤務態度を評価することをいいます。
リモートワークでは部下の勤務態度を評価することは難しくなります。1日中管理者が部下と行動を共にしている訳ではないですから、情意評価は評価項目から外しておきましょう。情意評価を外した代わりに業績評価の比重を重くしておきます。
また、コロナ時代にあってはコミュニケーションがより重要性を増してきます。1on1ミーティングを頻繁に行うことで、部下のコミュニケーション力を見極める必要が出てきます。
リモートワークでは、コロナ以前よりもいっそう、従業員の成果を評価する必要が出てきます。従業員の成果を評価するには目標管理制度がありますが、コロナ時代に目標管理制度を機能させるには、管理者のマネジメント力の向上と共に、従業員自身が当事者意識をもって仕事に取り組むようマインドを変えていく必要が出てきます。
管理者が「従業員が働いているかどうかを監督する」マネジメントを続け、また、従業員が会社や上司に依存的な意識を持ち続けていてはコロナ時代を乗り切れません。目標管理制度を徹底させるためには以下のような取り組みを取り入れてみましょう。
以上の取り組みをしていけいけば成果中心の評価制度を作っていけます。なお、従業員の成果を評価する企業のニーズに応えるには、従業員の職務に紐づいた等級を設定する「職務等級制度」の導入も効果があります。職務等級制度の検討も始めてみましょう。
新型コロナウイルス感染防止のため、従業員の働き方は大きく変わってきています。一方で管理者はコロナ以前と違って人事評価に戸惑いを感じています。コロナ時代に求められる人事評価制度のあり方が問われてきています。