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職能資格制度とは?職務等級制度との違い、メリット・デメリットを解説

職能資格制度とは、従業員の職務遂行能力を基準にした等級制度のこと。ジェネラリストを育成する日本企業で独自の発展を遂げました。記事では、職能資格制度と職務等級制度との違い、職能資格制度のメリット・デメリットを解説します。

職能資格制度とは?

職能資格制度とは、従業員の職務遂行能力を基準にした等級制度をいいます。主に日本で発展した等級制度です。

従業員の職務遂行能力とは、階層に応じて従業員が職務を遂行できる能力を指します。階層には新入社員からリーダー職、管理職まで幅広い階層があり、階層ごとに求められる職務遂行能力が異なります。

職能資格基準

階層ごとに求められる職務遂行能力は、職能資格基準に定められます。職能資格基準は、従業員の資格等級を設定し、資格等級ごとに求められる基準を設定したものです。

例えば7つの資格等級を定め、数字が大きくなるごとに求められる基準が高くなる職能資格基準を定めたとしましょう。その場合、例えば5等級であれば課長クラスの役職に値する等級と定める、という運用をします。

ちなみに資格等級と役職は必ずしも紐づいていません。つまり課長に就かなくても5等級の処遇を得ることができるのが職能資格基準の特徴です。

職能給

職能資格制度は職能資格基準に合わせて賃金が決まります。これを職能給といいます。賃金の範囲は等級ごとに決まっていて、職務遂行能力が習熟し、上位の資格等級に見合った職務遂行能力を発揮できると判断された場合、昇格していく流れです。

人事評価についても職能給と連動しており、従業員の資格等級に見合った職務遂行能力を発揮しているか否かで、企業は評価を決定していきます。

職能資格制度と職務等級制度との違い

等級制度には、職能資格制度の他に職務等級制度もあります。両者の違いはどんな点にあるかを解説しますので、職能資格制度のイメージを膨らませて下さい。

ヒト基準の職能資格制度

職能資格制度は従業員の職務遂行能力を基準にした等級制度です。そのため、ヒト基準の等級制度ということができます。同じ等級であれば、どの職種、職場であっても同じ賃金の範囲で賃金が決まります。

職能資格制度では従業員の能力を基準にしているため、職務内容が明確に定まっていません。職務内容が明確に決まっていないことで、企業は従業員に対して、ある程度自由に職務を与えることができるのです。また、配置転換も自由に行うことが可能です。そのため職能資格制度はジェネラリスト育成に適しているといえます。

職能資格制度では、人材の能力が下がらないことを前提に設計されています。従業員がキャリアを重ねれば能力は高まるため、賃金が上がりやすくなる仕組みです。

仕事基準の職務等級制度

職能資格制度に対して、職務等級制度は仕事基準の等級制度ということができます。職務等級制度では職務ごとにジョブ・ディスクリプション(職務記述書)を記述し、従業員はジョブ・ディスクリプションに定められた職務を遂行することになります。そのため、職能資格制度と違って、職務内容が人によって違ったり曖昧だったりすることはありません。

職務等級制度は欧米を中心に発展した制度です。ジョブ・ディスクリプションは細かく定義され、従業員はジョブ・ディスクリプションを元に職務を遂行するため専門性を高めることができます。職務等級制度はスペシャリストに適した等級制度といえます。

組織が変わるとジョブ・ディスクリプションの書き換えが必要になり、また、人事異動が多くジェネラリストを育成する日本企業が導入するにはハードルが高い制度といえます。ただ、新型コロナウイルスの感染防止をきっかけに、日立や富士通、資生堂などの大手企業が職務等級制度を導入しようとしており、職務等級制度の流れが日本国内において促進する可能性はあるでしょう。

職能資格制度のメリット

職能資格制度のメリットを解説します。

ジェネラリストの人材育成に役立つ

職能資格制度は従業員の職務遂行能力を基準に設定された等級制度です。仕事基準の等級制度ではないので、人事異動を行って従業員に様々な職種や職場を経験させ、ジェネラリストとして育成することに役立ちます。

例えばゼネコンで、現場監督者の経験を積んだ従業員に等級を変えないまま営業の仕事に就かせることができます。ゼネコンでは、現場監督者はビジネスの最前線で働いていますから、現場監督者の視点をもって営業活動に活かすことができるでしょう。さらに営業から人事に異動させれば、事業の成り立ちを把握した人材が人事制度設計や採用などに関わることになるため、大きな戦力となる可能性があります。

ジェネラリストの育成は、ヒト基準の職能資格制度だからこそできることといえます。

適材適所の人員配置が可能になる

職能資格制度は適材適所の人員配置が可能になります。職務等級制度のように仕事基準の等級制度を採用すると、人を異動させるにはジョブ・ディスクリプションを1から理解してもらわなくてはならず、人事異動が企業にとっても従業員にとっても大きな負荷となってしまいます。

その点、職能資格制度はヒト基準なので、従業員をどこに配置しても運用することができる仕組みです。たとえ経験不足だったとしても、職務遂行能力が適当であれば、異動後にOJTを行うことで不足分を補うことも可能。職務内容が曖昧だからこそ適材適所の人員配置ができるようになるといえます。

職能資格制度のデメリット

職能資格制度のデメリットを解説します。

人件費が高くなりやすい

職能資格制度は従業員の能力が下がらないことを前提に作られている等級制度。キャリアを重ねるほどに能力が高まるという思想を元に設計されているので、どうしても年功的になりがちとなります。

年功的ということは勤続年数が長くなればなるほど、職能資格制度では人件費が高くなってしまいます。従業員を下位の等級に下げようにも、職務遂行能力が下がったことを証明することは難しいです。また、職務遂行能力は成果とイコールではないので、成果をあげられなくても賃金が下がる訳ではありません。よって、職能資格制度は人件費が高くなりがちになるのです。

多様な働き方に対応できない

新型コロナウイルスの感染防止に対処するため、2020年4月の緊急事態宣言前後に、在宅勤務を実施した企業が見られました。在宅勤務でもオフィス勤務時と同様に成果を出せれば、女性や高年齢者、障害者、あるいは育児や介護をしながら働こうとするなど、多様な働き方を求める人材に活躍してもらうことができるでしょう。

しかし、職能資格制度は職務内容が曖昧なので、在宅勤務を導入する際には職務をきっちり分ける必要が出てきます。また、仮に在宅勤務を導入しなかったとしても、限られた時間の中で自分の職務を全うし成果を上げる働き方が認められれば、多様な働き方も進むでしょうが、職務内容が曖昧な職能資格制度ではなかなかうまくいきません。

グローバル企業には合わない

欧米で採用している等級制度は職務等級制度ですが、日本企業は職能資格制度を採用しています。そのため、海外に進出するグローバル企業は、海外向けに職務等級制度を設計し直さなくてはなりません。

本社で使っている等級制度と海外の現地法人で使っている等級制度が異なると、人事管理が煩雑になりかねません。だからといって現地法人に職能資格制度を強要すると、海外の現地スタッフの理解を得られず、モチベーションの低下や離職のリスクをはらむことになってしまいます。

まとめ

職能資格制度は、従業員をジェネラリストとして育成するのに適した制度で、人事異動が多い日本企業に適していました。しかし、人件費の高騰や多様な働き方へのニーズに応えるためには、職能資格制度を維持し続けるのは難しい局面に入りつつあるということができるでしょう。

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