DXとはデジタルソリューションによる変革を意味する言葉です。企業が競争優位性を確保するためにDXへ取り組むことが重要です。人事領域のDXはどのようなものか?求められる背景とは?活用するメリットについて解説します。
目次
デジタルソリューションによる変革を意味するDX。経済産業省によるDXの定義、また、人事領域におけるDXとは何か確認していきます。
DXとはデジタルトランスフォーメーションの頭文字を取った言葉です。経済産業省はDXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(2018年12月DX推進ガイドライン)と定義しています。
参考:デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン
DXは本来、デジタルソリューションによって社会や経済に衝撃を与えるほどの変革をいいます。DXの目的は、AIやビッグデータといったIT技術を用いて企業が他社よりも競争優位な位置を確保することを目指しています。
経済産業省は2018年に9月にDXレポートという報告書を発表しました。レポートによると、日本企業の既存システムは複雑化、ブラックボックス化しているためアップグレードする必要性があります。アップグレードすれば、企業はDXを実現できるようになります。しかしアップグレードしないと日本企業はDXに乗り遅れることになります。つまり日本企業は他国よりも競争劣位に置かれてしまうのです。
参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
DXレポートは、既存システムのアップデートに失敗した場合、2025年以降に、年間で最大12兆円の経済損失が生じるリスクがあると警鐘を鳴らします。DXレポートは、この問題を2025年の崖と報告しています。
人事領域で扱うデータは、人事評価や人事管理、人材開発、組織開発など取り扱いに注意するデータが多いです。経営資源の中でもヒトは重要な資源です。モノもカネも情報も、ヒトが使わなくては経営に活用反映されません。人事領域のDXは、重要な経営資源であるヒトを有効活用するために必要な取り組みです。
DXレポートによって、2025年の崖という経済損失のリスクがあることが分かりました。それでは企業にとってDXはなぜ必要なのでしょうか?人事領域にDXが必要な理由と合わせて確認していきます。
企業にとっては競争優位性を確保するためにDXを必要とします。例えば、ある自動車メーカーの強みが他社にない品質の高さにあるとします。一方、自動車業界を取り巻く環境変化は大きく、電気自動車や自動運転などの頭文字をとった「CASE」という言葉に象徴されるように、ネットへの繋がり、自働化、共有化などが求められるようになっています。環境変化の中、品質が高いというだけでは自動車は売れず、本来の強みが競争優位とはいえなくなってきています。
そこでDXが求められます。DXは、所有から利用へと消費者の使い方を変えるのです。トヨタ自動車のKINTOは、定額制で好きな新車に乗れるサブスクリプションサービスです。一定期間が過ぎれば別の新車に乗り換えることもできます。品質が高く信頼性の高いトヨタ自動車の車を消費者のニーズに合わせて利用できるようになれば、環境変化に耐え得る競争優位性を確保できるのです。
環境変化は事業だけでなく、人事や組織にも影響を及ぼしています。新型コロナウイルスによるテレワーク推進は、ビジネスパーソンの働き方を大きく変えました。海外の企業に勝つためには生産性を向上させ、少ない労働投入量で高い付加価値を出す必要があります。ヒトや組織が環境変化に柔軟に対応しなくては生き残っていけません。
人事領域にDXを活用することで、環境変化に対応していけるようになるのです。例えばタレントマネジメントツールを活用し高い業績を挙げている人材を可視化することで、有効な人材開発や配置転換に繋げることができます。
人事領域にDXを活用すると、経営者は迅速に人事戦略を実行することができます。例えば以下のような人事戦略のニーズが考えられます。
組織風土をDXで可視化して、エンゲージメントが高い部署・低い部署がどこかが分かります。DXでAIが社員の適性や目標に合った教育研修を選んでくれれば、社員はオプションから任意に選んで受講していけます。自律性や創造力を養う研修を受講することで、環境変化に対応する人材を育成できます。スピード感をもって人事戦略を実行できるのです。
人事領域にDXを活用するとどんなメリットがあるでしょうか?2点を紹介します。
大量に人材を採用する企業は、履歴書やエントリーシートをチェックするだけでも採用担当者に負担がかかります。しかも、負担がかかるだけに企業が欲しい人材を確実に選べているかが不安ですね。
DXを採用に活用し、履歴書やエントリーシートをAIがチェックすることで採用担当者の負担を軽減します。しかも応募書類をAIが適切にチェックしてくれるので、欲しい人材を漏れなく選考過程に載せることができます。また、一次選考をAIに任せるDXを活用すれば、同様に採用コストを減らせます。採用担当者は、空いた時間を他の重要な業務に充てることができるわけです。
テレワークが進むと、上司は部下の働きぶりを常に確認することができなくなります。そこで多面評価を導入し、上司だけでなく同僚、部下、先輩などから見た人材を客観的に評価する仕組みを取り入れます。DXを活用し、クラウド型多面評価システムを導入すれば回答者選定機能や評価結果の管理などが効率的にできるようになります。
人事評価は社員の成長を促すことでもありますから、評価期間の中で多面評価が更新されていけば自己成長に繋がります。
デジタルソリューションを活かして企業の変革を行うDX。人事領域にDXを活用することで、経営者は迅速に人事戦略を実行できます。環境変化が激しい世の中にあって、人材や組織を柔軟に対応させることは経営者にとって喫緊の課題です。人事領域のDXを有効に活用し競争優位性を確保していく必要があります。