障害者雇用促進法が2020年に改正!企業がとるべき対応を解説
障害者雇用促進法とは、障害者の雇用の安定を目的とする法律です。障害者雇用促進法は1976年に施行されています。障害者雇用促進法の概要、企業がやるべきこと、2020年改正における企業の対応事項について解説します。
目次
障害者雇用促進法とは?
障害者雇用促進法とは、障害者の雇用の安定を目的とする法律で、正式には「障害者の雇用の促進等に関する法律」といいます。事業主が守るべき障害者の雇用義務、差別の禁止などが盛り込まれています。障害者雇用促進法の背景には、国民が障害の有無によって差別されずお互いに尊重し合いながら働ける社会を目指すことが挙げられます。
法律の概要
障害者雇用促進法によって企業に関係する事項として、雇用義務・納付金・調整金・差別禁止・障害者雇用の届出などがあります。雇用義務と納付金、調整金については次項で説明します。
差別禁止とは、求人において障害がない人と障害者に差別をしてはならないこと、また、給料や人材育成、福利厚生などの待遇において障害者に差別をしてはならないことなどをいいます。
障害者雇用の届出とは、45.5人以上の労働者がいる事業所について、障害者の雇用状況を毎年ハローワークに届け出る義務があること、また、障害者を解雇する場合、解雇することをハローワークに届け出ることなどをいいます。
雇用義務が発生する企業とは?
障害者雇用促進法により、全ての事業主に対し、障害者雇用率の基準で障害者を雇用することが定められています。障害者雇用率は法定雇用率ともいいます。
2020年4月の法定雇用率は2.2%。労働者を45.5人雇用している場合、1人の障害者を雇用する義務が出てきます。雇用すべき障害者の数は、常用雇用している労働者数×法定雇用率によって求められます。例えば、常用雇用している労働者が500人の企業の場合、11人の障害者を雇用する義務が生じるわけです。なお法定雇用率は、2021年4月には2.3%に引き上げられる予定です。
もし法定雇用率を満たしていない場合、事業主には障害者雇用納付金を納付する義務が生じます。常時雇用している労働者数が100人以上の事業主につき、月額5万円/人の納付金を納付する義務があります。ちなみに納付金は、法定雇用率を満たしている企業と満たしていない企業との調整をするために求められるもので、罰金ではありません。
また、法定雇用率を達成している事業主には調整金が支給されます。常時100人超の労働者を雇用する事業主には月額27,000円/人、常時100人以下の労働者を雇用する事業主のうち、障害者の割合が常用労働者の「4%」もしくは「6人」の場合、月額21,000円/人が支給されます。
障害者の定義
障害者雇用促進法における障害者の定義は、「身体障害、知的障害、精神障害、その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」です。注意したいのは全ての障害者に雇用義務があるのではない点です。法定雇用率の対象となる障害者は次の通りです。
- 身体障害者:身体障害者手帳保持者(重度身体障害者を含める)
- 知的障害者:療養手帳保持者、判定機関による判定書保持者(重度知的障害者を含める)
- 精神、発達障害者:精神障害者保健福祉手帳保持者で症状が安定して、就労可能な者
障害者雇用促進法の歴史
障害者雇用促進法の歴史は、1960年に制定された身体障害者雇用促進法に遡ります。1976年の障害者雇用促進法に名称変更し、現在に至っています。2020年4月の改正により、事業主への給付制度・優良事業主としての認定が創設されました。
障害者雇用促進法の改正内容
2020年に障害者雇用促進法が改正されました。改正された内容を確認していきます。
事業主への特例給付金制度
短時間勤務の障害者を雇用する事業主に対して特例給付金が支給されます。従来の障害者雇用促進法では、週20時間未満で働く障害者に対して、雇用したとしても企業は障害者雇用調整金などの支援を受けることはできませんでした。改正により、週10~20時間未満で働く短時間勤務の障害者に対して給付金が支給されるようになります。
給付金支給により、短時間であれば勤務可能な障害者が働く機会を持てるメリット、短時間勤務の障害者を事業主が雇用するメリットが得られます。特例給付金の支給期間には制限がありません。
支給金額の要件は労働者数によって異なります。常時100人超の労働者を雇用する事業主が短時間勤務の障害者を雇用した場合、1人につき月額7,000円が支給されます。また、100人以下の労働者を雇用する事業主の場合は、1人につき月額5,000円が支給されます。
なお改正によっても、法定雇用率の基準には算入されない点は変わりません。特例給付金が支給されたからといって、法定雇用率の算定対象に含めないようにしましょう。
優良事業主としての認定
障害者雇用の促進を進めた300人以下の中小企業に対して、優良事業主として認定される制度が創設されました。中小企業では障害者雇用の促進が進んでいないため、障害者雇用優良認定制度が創設されたのです。優良事業主として認定されることで、中小企業は障害者雇用に積極的に取り組んでいることをアピールすることができます。
また、優良事業主として認定されれば、自社製品に認定マークを貼付できる他、障害者の有無に関係なく人材を広く採用する機会を得られます。
まとめ
2020年、障害者雇用促進法が改正されたことにより、事業主への特例給付金制度および優良事業主としての認定制度が創設されました。障害者雇用促進法の目的である「障害者雇用の安定」のために、企業は改正内容をよく知り、障害者雇用促進に役立てていきましょう。
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