技術革新やグローバル化、さらにはコロナ禍の影響により、企業は混迷の時代に立たされています。こうした状況下で生き抜くために必要な人材を解説しつつ、人材育成に注力することで得られる効果や制度整備のポイントをお伝えします。
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マーケティング理論の「プロダクト・ライフサイクル」によれば、製品やサービスには20~30年ほどの寿命があるといわれ、「導入期、成長期、成熟期、衰退期」という4段階を辿るとされています。
しかし現在、技術革新やグローバル化など様々な要因によって事業の短命化が進み、10年ほどで衰退期にまで達してしまうといわれています。
近年、VUCA(ブーカ)時代というキーワードが出てきました。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉であり、社会やビジネスにおいて将来の予測が困難になっている状態を示す造語です。
目まぐるしく変化する時代のなかで活躍できるのは、どのような力をもつ人材なのか解説していきます。
技術や価値観は目まぐるしく変化しており、新型コロナウイルスの感染拡大の影響も加わり、これまでセオリーだった多くの事柄が崩れさりました。
こうした時代に必要となるのが、新たな選択肢を模索するための思考力や発想力です。基礎的な知識から応用を導き出し、問題を解決する力が求められます。
ニーズの汲み取りや問題点の洗い出しについて考えを巡らせ、適切かつ有効な施策を立てられる人材を育成しましょう。
コミュニケーション能力はきわめて重要な能力ですが、様々な要素を含み、一言では表せません。海外とのコミュニケーションを可能とする語学力。リモートワーク下の限られた接点で要点をくみ取る傾聴力。課題を設定してチームを率いる統率力。このように一口にコミュニケーション能力といっても、発揮される場面や方向性は異なります。
自社の事業に求められる「コミュニケーション能力」は何なのかをしっかりと把握したうえで、人材を育成しましょう。
新たな事業の立ち上げや方針転換の際に必要となるのは、学びの姿勢です。とくに事業の中核を担う人材には、環境の変化を嫌わず、学びに対する意欲的な態度が求められます。上長からの指示はもちろんのこと、同僚や部下の働きぶりからも学んでいく姿勢が大切です。
また、学びに対して意欲的になれる環境を作り出すため、学習への取り組みが評価につながるよう人事評価制度を整えることも大切です。ただし、従業員自身に学びへの意欲がなければ、どれだけ育成制度を整えても効果は得られません。こればかりは当人の資質に寄るところが大きいため、採用段階からしっかりと学習能力を持っているかを見極める必要があります。
企業としての経営目標や営業目標の達成には、人材育成が欠かせません。人材育成とは単に従業員個々人の技能を向上させるだけではなく、経営層の理念や事業の重要性の共有などを含みます。
従業員が自身の関わる業務の重要性を理解することで、主体性をもって業務にあたることが期待されます。業務に「自分事」として携われば、モチベーションが維持され、新たな技術や方法論の創出にもつながります。
明確な答えが得られにくい状況にこそ、自発的に思考する能力が欠かせません。与えられた業務をただこなすだけではなく、従業員各々が主体性を持つことが重要なのです。
企業が人材育成に力を入れることにより、従業員の生産性向上につながります。単にスキルアップによって生産性が上がるだけでなく、モチベーションアップによる効果が作用するのも大きいでしょう。
また、人材育成に力を入れていることは、採用活動のアピールポイントとしても有効です。向上心の高い人材が同業他社と比較したうえで、自社を選ぶ可能性が上がるためです。優秀な人材を確保できれば、その分だけ生産性の向上につながります。
人材育成でどのような事柄に重点を置くかは、まず実際の業務のなかから探っていくとよいでしょう。
業務のなかで必要となるスキルや知識は当然として、現場の従業員が不足していると感じる事柄も洗い出す必要があります。特に現場で「今後必要になる」と肌で感じているスキルや知識などがあれば、積極的に新人への育成項目に盛り込んでいくとよいでしょう。
人材育成は評価制度と紐づけて運用することで、効果的にモチベーションアップへとつながります。目標への到達度が人事評価につながれば、従業員にとってもキャリアパスが明確になるからです。
育成制度は自身の成長につながる実感が伴っていればよいですが、日々のタスクの増加にしか感じられないとモチベーションの低下につながりかねません。成果や達成度に応じて人事的評価が得られれば、自身の成長を実感しやすくなるでしょう。
答えを得にくい時代だからこそ、企業としての目標値は明確に定めたうえで育成を実施しましょう。評価制度と紐づけるうえでも、目標値が曖昧では評価が定まりません。
また、目標値は現実的に達成可能な範囲に設定しないと、従業員のモチベーションは増すどころか低下してしまいますので注意しましょう。
育成制度とセットで考えなければならないのが、人材流出の問題です。せっかく育成した優秀な人材を同業他社へ流出させてしまうと、自社の貴重な戦力を失うばかりか、他社へ塩を送るようなかたちになってしまいます。
人材の流動性が高まる現代において、優秀であればあるほど他社への流失の危険性は高まると考えたほうがよいでしょう。この点でも評価制度や育成制度はしっかりと整備し、従業員の満足度を高い水準で維持することが欠かせないのです。