地方の労働力人口は2050年までに40%減少するといわれており、地方企業の採用事情はますます厳しいものとなります。地方企業が抱えがちな課題と採用を成功させるためのポイントを押さえ、コロナ禍をチャンスに変えてまだ見ぬ人材を獲得していきましょう。
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現在の地方企業は、急激な労働力人口減少の真っ只中にあります。国土交通省「地方における人口・労働力の変化」によれば、2000年から2050年までに労働力人口は最大で約40%減少すると試算されています。
政府は労働力人口の減少の対策として、外国人労働者の受け入れを進めてきましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、外国人労働者の増加には急ブレーキがかかりました。
地方における採用は八方ふさがりの状況に思えますが、コロナ禍は採用のチャンスの側面があります。
観光業や飲食業などを中心に失業者が増えたことにより、完全失業率は3%前後で推移(2021年10月現在)しており、これは転職市場に多くの人材が流入していることを意味します。この先、人口減によってますます採用競争が厳しくなることを考えれば、貴重な採用機会が訪れているといえるでしょう。
応募が来ないと悩む企業の多くは、求人サイトやハローワークなどの求人媒体に掲載するだけで、自社情報を整備できていません。
求職者の9割以上は、求人媒体だけでなく企業のホームページや採用サイトを確認するといわれています。求人媒体は掲載できる情報量が限られているため、求職者は企業のホームページからより多くの情報を手に入れようとするわけです。
応募の少なさやミスマッチに悩む企業は、自社から発信すべき情報を十分に用意できておらず、知らず知らずのうちにアピール不足に陥っているのです。
さらにコロナ禍にあっては「非対面方式」での対応が不可欠となります。オンライン説明会や、SNSを通じた情報発信など、web対応は喫緊の課題といえます。
採用に行き詰まる地方企業は、「地元でがんばりたい人や優秀な人がいたら採用したい」といった曖昧なペルソナ(採用ターゲット)を設定しがちです。
明確にどんなポジションが与えられ、どんな役割を期待されるかがわからないと、求職者も入社に踏み切ることはできません。
まずは、自社が今どんな課題を抱えており、年齢層の構成や事業展開の方向性などを踏まえて、不足しているポジションを明確にする必要があります。
そうすれば「即戦力のベテラン」や「将来性のある若手」といった役割に基づく年齢層が定まります。そのうえでさらに、どんなスキル・経験を持ち、どのような人柄の人材を求めるのかなどを詳細に設定していきましょう。
地方企業の採用活動でありがちな失敗として、懇意にしている求人媒体を利用し続けることが挙げられます。とくに、若い人材を求めているのに、地方紙に求人を出し続けるといったミスマッチを犯しがちです。
一昔前まではフリーペーパーなどの気軽に手に取れる紙媒体が全盛でしたが、現在の主流はwebです。とくに、若い人材へ訴求する際は、webでの求人が前提となります。
逆に、ミドル層やシニア層、地元に密着した人材を雇用したいのであれば、地方紙も効果的な求人媒体になり得ます。 つまり、採用手法もペルソナ(採用ターゲット)を明確にしておくことで、より効果的な媒体を選択できるようになるわけです。
ものづくりを長年続ける企業などは、管理職に異業種の人材を迎えることに抵抗を持つ傾向があります。社内でも「業界を知らない人に、自社の管理職は務まらない」といった意見が必ず挙がるのではないでしょうか。
しかし、業界の知識やものづくりの経験がいくらあっても、マネジメント能力がなければ管理職の職務は果たせません。現場での能力と、オペレーションや人材育成といった管理職としての能力はイコールではないのです。
コロナ禍によって特定の業界からの流出が増える現在は、異業種の優秀な人材を獲得できるチャンス。ときには業界経験よりも、経歴や人柄を重視して適材適所の採用を行うことも大切なポイントです。
コロナ禍によってテレワークが推進され、働く場所を問わない時代が訪れつつあります。地方企業にとってはフルテレワークの認可により、採用のチャンスが全国にまで広がるというわけです。
また、Uターン人材などの他の地域に住む人材を募集する際は、会社でできるだけのサポートを行うことが強い訴求となります。候補者からすれば、新たな土地で生活環境を整えるのは大変な苦労です。住居の手配などの不安要素をサポートすることで、候補者の心を掴むことができるでしょう。
優秀な人材を採用するには同業他社や大手企業との競争に勝たなければいけませんが、地方企業は報酬面で劣ることが少なくありません。
しかし、報酬面で劣っていても見方を変えることで、求職者の心を掴める可能性があります。例えば、報酬を短期的な金額だけでなく、長期的な「生涯年収」でアピールする方法があります。
大企業の多くは、一定の年齢を超えると給与を大きく減額して「継続雇用制度」を用いります。これに対し、労働力人口が減少する地方では60歳以上も重要な戦力であり、通常の方式で契約を続ける企業も多いのではないでしょうか。
とくにミドル層の働き手にとっては、年齢を重ねても働き方や給与が変わらないのであれば、やりがいや生涯年収の面でメリットを感じられるわけです。
他企業に比べて劣る条件面があっても、アピールの方法で求職者の心を引き寄せましょう。
地方における労働力人口の減少はすでに目に見えて進行しており、地方企業の採用は厳しい状況が続きます。一方で、コロナ禍は東京への一極集中を見直すきっかけとなり、テレワークなどの技術的・環境的な進歩も加速させました。
地方企業はこれを機に採用活動を見直し、今まで出会えなかった人材の獲得を目指すべきでしょう。