リスキリングは、新しい仕事を行うために、業務で必要となるスキルや知識を習得すること。経済産業省が推進しており、DXとセットで語られることが多い施策です。業務効率化や新しいアイディアの創出など競争力向上に直結するため、積極的な導入が求められます。
目次
リスキリングとは、新しい仕事を行うために、業務で必要となるスキルや知識を習得することです。また、経営戦略として、従業員に対して必要となるスキルや知識の習得を促すという意味もあります。
海外で先行して注目され始め、世界経済会議(ダボス会議)では2018年から3年連続で「リスキル革命」というセッションが実施され、「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」という宣言が出されました。
日本においては経済産業省が主体となってリスキリングを推進しており、2017年度から「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」を実施。AIやデータサイエンスなど、将来の成長が期待される分野での人材育成が図られています。
リスキリングはDX(デジタルトランスフォーメーション)とセットで語られることが多い施策です。
DXは経済産業省によれば「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位を確立すること」としています。
引用:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」
「データとデジタル技術の活用」を進めるにも、それを行えるだけの知識・スキルが必要となるため、必然的にDXはリスキリングを伴うものになるわけです。
リスキリングは「業務上で必要となるスキル・知識を得る」ことに重きが置かれる点で、リカレント(学び直し)とは意味が少し異なります。
リカレントは社会人となった後に幅広い分野で学びを深めることを意味し、多くは現在の職業を一度離れることが前提とされます。
リスキリングによって、具体的にどのようなメリットが得られるのか解説していきます。
従業員が業務上で必要となるスキル・知識を身につけることで、業務の効率化と企業としての競争力向上につながります。
具体的には、長時間労働の削減や新規業務・事業への対応などが実現し、企業・従業員双方が恩恵を得られます。
自社の事業や風土を理解した人材がリスキングを行うことで、社内への応用がスムーズとなり、新たな仕事を任せやすくなります。
また、データやデジタル面の業務を外注などに依存すると、「対応がワンテンポ遅れる」「最善の業務が行われているか自社内で評価できない」などの問題が生じます。
こうした問題を生じさせないためにも、リスキリングによって自社内のスキル・知識を高めておく必要があります。
これまでの事業・業務をベースとしつつ、新たな知識が上乗せされることで、新たなアイディアが創出されやすくなります。
リスキリングによって、「改善が困難と思われていた業務上の課題の解決」「新規事業の展開」といった成果につながっていくでしょう。
小規模な調査ではありますが、20代の8割以上が「リスキリングを支援する企業への志望度は向上する」と回答しています。
参考:株式会社学情 「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(リスキング)」
リスキリングの推進は、採用力の向上、既存社員のエンゲージメント向上などの副次的効果も期待されます。
リスキリング導入にあたって、大まかな手順を解説していきます。
リスキリングは事業戦略と人材戦略に基づいて、習得を目指すべきスキル・知識が決定されます。今後の展望のなかで、社内にノウハウのない分野(スキル)を洗い出してみましょう。
これまでの業務にないスキル・知識を習得するには、従業員の自発性が欠かせません。リスキリングは強制しても効果が期待できないため、従業員の意志確認のうえで実施しましょう。
リスキリングを行うには、社外の知見を取り入れる必要があります。外部講師を招いた研修会や社会人大学の活用など、従業員が学びやすい環境・方法を選定しましょう。
リスキリングが始まったら、勉強の進捗具合などのフィードバックを欠かさず、適宜改善を行っていきましょう。
リスキリングが完了した後は、実際にそのスキル・知識を活かせるように業務中に実践してもらいましょう。場合によっては、そのほかの従業員もノウハウを共有できるよう、マニュアル化なども検討すると効率的です。
リスキリング制度を導入するにあたっての注意点を解説していきます。
日本企業の多くは、職場で実践しつつ業務にまつわるスキルを学ぶ「OJT型」の能力開発に慣れ親しんでいます。
しかし、リスキリングは社内でいま実施できない仕事を可能とするために、スキル・知識を習得する施策です。仕事の中から学ぶOJT型とは根本的に取り組み方が異なるため、現行のOJT型を前提とした社内制度から見直す必要があります。
就業時間にリスキリングの時間を確保する場合は、社内でもリスキリングを推進することを周知し、理解を得るための雰囲気作りを行いましょう。
「仕事に関係ない研修に出ている」といった偏見が生まれないよう、全社的な理解が必要です。
リスキリングは、一朝一夕でなるものではありません。事業展開のスピード感と天秤をかけた際、必要なスキル・知識を持った人材を新規採用するほうが良い場合もあります。
自社の状況を鑑みて、新規採用とリスキリングのどちらがふさわしいか検討してみましょう。