コロナ禍によって副業への関心が高まっており、企業は対応方針を明確にする必要があります。基本的に副業を制限できる法律はなく、厚生労働省も副業促進の方針を取っています。副業を認める事は企業にとってもメリットがあるので、認可のルール作りを進めていきましょう。
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コロナ禍によって働き方が大きく変容するなか、とりわけ注目を集めているのが副業です。マイナビが2020年10月に発表した「働き方、副業・兼業に関するレポート(2020年)」によれば、副業・兼業を認めている企業は全体で49.6%、将来的に副業を認可・拡充予定の企業は57%となっています。
副業や兼業を導入する理由としては、「社員の収入を補填するため」が43.4%で最も高くなっています。給与を上げて従業員の副業を阻止するよりも、副業を認めて自己責任で収入を上げてもらいたいという意図が見て取れます。
参考:https://news.mynavi.jp/article/20201023-1431749/
また、日本経済新聞社・日経HRの共同調査では、会社員の7割以上が副業へ関心を持っているという結果がでています。
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66730520X21C20A1EA2000
副業への関心の高まりは顕著であり、対応が定まっていない企業は早急に方針を定めるべきでしょう。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由」としています。
企業が従業員の副業を制限することが許される例としては、以下のような事柄が挙げられます。
同ガイドラインでは「裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である」としており、厚生労働省は副業・兼業の普及・促進の方針を取っています。
参考:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf
副業を認可するにあたり、従業員の「副業による労働時間」を把握できるようにルールを整備しましょう。
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」にも労働契約法第5条を根拠とした「安全配慮義務」が記載されており、「副業・兼業の場合には、副業・兼業を行う労働者を使用する全ての使用者が安全配慮義務を負っている」とあります。
つまり企業は「従業員が副業による過労で倒れても、それは自己責任」と済ますわけにはいかないのです。長時間労働によって業務に支障がでることが明白な場合は、事前に副業を制限する必要があります。
それでなくとも、オーバーワークは自社での業務に支障をきたす原因となります。副業を認可する際は、まず従業員がどの程度の時間を副業に費やしたいのか確認しておく必要があります。
労働者には、会社での仕事と競合する副業(業務)を行わない義務があるとされています。
副業を認可する際は、競合を防ぐために大まかな業務内容を申請させるよう徹底させましょう。
労働者は、会社での業務上で知りえた秘密を守る義務を負っています。従業員が自社での業務中に得た情報をもとに副業を行わないよう、注意喚起しなければなりません。
すでに副業を認可している企業では、「入社〇年目以降の社員のみ」「他社での雇用が生じない」といった条件を課す場合が多いようです。なかには「会社に籍を置きながらの起業を認める」という企業もあります。自社の風土に即したルールを検討・整備していきましょう。
副業を認めることで、自社での業務が疎かになるのではないかと不安に思うこともあるでしょう。しかし、多くの企業が副業を認可するのは、それ相応のメリットがあるからです。
上で取り上げたマイナビの調査によれば、副業や兼業を導入する理由として2番目に多かったのが「社員のモチベーションを上げるため」です。
実際、ある調査では、副業を認める企業に対して「より魅力的に感じる」と回答した人は6割以上に上り、対して副業を認めない企業に対する魅力度は6割超が「低下した」と回答しています。
参考:http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000040832.html
副業を認める企業と認めない企業とでは、愛社精神(エンゲージメント)に大きな差が生まれ、生産性や離職率にも影響が出てくるでしょう。
上で取り上げたマイナビの調査によれば、副業や兼業を導入する理由として3番目に多かったのが「社員にスキルアップしてもらうため」です。
本来であれば、企業側が用意すべきであったスキルアップの機会を従業員自らが創出していると考えれば、企業にとってもメリットがあるといえるでしょう。
社会全体で副業を認めていくことは、採用面で新たな選択肢が増えることにつながります。それが副業人材の採用です。
先進的な取り組みとして、ヤフーが2020年10月から運用を始めた「ギグパートナー」が挙げられます。この制度では副業人材を104人も受け入れており、そのなかには他の上場企業の経営陣も含まれているといいます。
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFK063W20W1A100C2000000
中小企業からみれば、大企業の有能な人材を副業人材として登用できる可能性が出てくるわけです。副業を推進する企業は生産性が落ちる不安よりも、「副業」によって優秀な人材を採用しやすくなるメリットのほうが大きいと考えているのです。
ほとんどの求人媒体は正社員や派遣社員、新卒や転職といった住み分けによって運営されており、「副業」で募集できる場は少ないのが現状です。そこで活用すべきなのが、自社採用サイト。
自社採用サイトであれば独立した運用ができるため、雇用形態にとらわれずに募集要項を作成できます。幅広い人材を受け入れつつ、副業を積極的に認可していることをアピールすれば、新しい働き方を求める人材にも訴求できるでしょう。