オンボーディングとは、新入社員が少しでも早く職場に馴染み、実力を発揮できるようサポートするための取り組みです。早期離職を防ぎ、エンゲージメントを高めることにより生産性の向上や成長促進が期待されます。採用活動の一環として、実施を検討してみましょう。
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オンボーディングとは、新しく入社した人材が少しでも早く職場に馴染み、本来の力を発揮できるようサポートする取り組みを指します。「船、飛行機、車に乗って」といった意味をもつオンボード(on-board)から転じた言葉です。
日本ではあまり浸透していない表現ですが、歓迎会や入社後の研修はオンボーディングの一環となります。代表的な入社後の取り組みとして新卒一括採用のオリエンテーションなどが挙げられますが、オンボーディングでは新卒・中途採用を問わないプログラムとして扱われることが多いようです。
オンボーディングが注目される背景としては、「人材の流動化」が進み中途採用が活発となるなかで、早期離職してしまう人材が後を絶たないことが挙げられます。早期離職はせっかく人的・金銭的な労力をかけて実施した採用活動が水疱に帰すことを意味し、企業として大きな損失となるからです。
オンボーディングは採用活動の延長線にある重要な取り組みであり、本来はセットで考えるべきなのです。
上でも触れたとおり、新入社員の早期離職を減らすことは、コスト面での余計な負担を減らすことに直結します。
新卒入社に限ったデータではありますが、厚生労働省の「新規大卒就職者の事業所規模別離職状況」によれば、1年以内の離職率は1割以上、3年以内の離職率は3割以上で推移しています。
欠員補充のための採用活動を繰り返すことは人的・金銭的コスト増を招き、人材確保の遅れは事業の停滞を招きます。採用した人材に長く働いてもらい、期待通りの働きを求めるには、オンボーディングによる早期離職の防止を徹底する必要があるのです。
厚生労働省の「転職者実態調査の概況」では、転職者が新しい職場でどの程度満足しているかが調べられています。これによれば、「どちらでもない」が35.5%、「不満足(やや不満・不満)」が10.3%となっており、半数近くが「満足」には至っていないことがわかります。オンボーディングによって、入社後の満足度を高める必要があることを伺わせます。
オンボーディングの実施によって新入社員のモチベーションを向上させれば、会社に対するエンゲージメントの向上につながります。即戦力の人材であればより生産性を高め、ポテンシャル採用であれば成長速度を早められるでしょう。エンゲージメントは、企業としての生産性の向上につながるのです。
第一印象は後の評価に大きく影響を与えるといいます。入社においても同様で、受け入れ体制が整っていないと、新人社員は会社に対してマイナスの印象を持ってスタートをきることになってしまいます。オンボーディングは、新入社員が入社する前から始めるべきなのです。
受け入れ体制は、会社の都合を押し付けるようなかたちになってはいけません。初日から研修を詰め込み過ぎると、新入社員への負担が重くなります。反対に隙間時間が多くなっても、新入社員には行うべき業務がありませんので手持ち無沙汰な時間となってストレスになります。
研修だけでスケジュールを組むのではなく、所属部署でのランチ会や社内の案内などで適度に息抜きの時間を設けることも大切です。
人間関係は離職理由と密接に関わる要因です。メンター制度や1on1といった社内制度でコミュニケーションの機会を設け、人間関係の不安解消につなげていきましょう。これら制度は「困ったときは〇〇に聞けばいい」という安心感にもつながります。
中途採用の場合でも同時期に複数名を採用するのであれば、「同期」として交流の機会を設けてあげるとより安心感が高まるでしょう。
ただし、コミュニケーションを強制されることはストレスにつながる場合もあります。入社間もない時期に飲み会を開催されても、気疲れが勝ってしまうことも少なくないでしょう。
人間関係にまつわる部分はマニュアル通りに実施するだけでなく、新入社員それぞれの性格を考慮しつつフォローすることを心がけましょう。
入社後の研修が落ち着いてきた段階で必要となるのが、目標です。とはいえ入社間もなく達成困難な目標を提示されると、会社とのミスマッチが先立って感じられてしまいます。
達成可能な目標を一つずつ提示し、実務を通して課題や改善点を見つけてフォローすることにより、自信と周囲との連帯感が芽生えていくでしょう。
こうした目標達成の先に大目標となるキャリアを提示することで、地に足をつけながら日々の業務に向き合うことができます。達成感や連帯感が得られれば、自ずと離職のリスクは低下していくでしょう。
新入社員の受け入れは事務的に実施するのではなく、オンボーディングとして計画的に実施することで様々な効果が得られます。
また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オンラインによるオンボーディングを検討しなければならないことが増えていくでしょう。しかしオンラインになったからといって、行うことが根底から変わるわけではありません。積極的にzoomやチャットツールなどでコミュニケーション機会を増やし、心理的なケアに努めていきましょう。