入社3年目までの若手社員をどのように教育していますか?新入社員や管理職には教育しているが、若手社員には教育をしていない企業もあるでしょう。企業を取り巻く外部環境が変化を遂げる中、若手社員のうちから自律型人材として育てることによって、イノベーションを生み出し、組織力を向上させていく必要があります。この記事では、若手社員の人材育成の現状、自律型人材育成方法について解説します。
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入社すぐの新入社員には新入社員研修を行っている企業が多いことでしょう。平成30年度能力開発基本調査(厚生労働省)によれば、「新規採用者など初任層を対象とする研修」の実施率が76.8%と高い数値を示しています。「マネジメント」(49.1%)、「中堅社員研修」(48.1%)と続きます。
一方、若手社員を対象としたと推測できる「ビジネスマナー等のビジネスの基礎知識」(44.9%)、「コミュニケーション能力」(37.4%)と、新入社員に比べると低い実施率に留まっているのです。
若手社員は入社2~3年目までの社員を指します。新入社員に比べれば実務経験もありますが、複数の領域で専門分野があるわけではなく、上司・先輩から仕事を教わりつつ徐々に専門領域を広げていきます。
若手社員にはいくつかの特徴があります。
物心ついた頃から、若手社員の周りにはインターネットがありました。そのため、調べようと思えばすぐに検索することができます。そのため、若手社員は「情報収集に長ける」特徴があると言えます。ネット検索のやり方も巧みで、キーワードをいくつか組み合わせて検索し、必要な情報を短時間で探します。
また、カケハシスカイソリューションズの「新入社員対象 意識調査」(2018年)によると、約8割の新入社員が仕事で失敗することに不安を感じていることが分かっています。新入社員が入社して2~3年目になれば若手社員となります。失敗を恐れるため、若手社員は上司・先輩から言われたことしかやらない傾向があると言えます。
本来、ビジネスには答えがありませんから、言われたことだけやっていては成長しません。しかし失敗を恐れるために新たなことに挑戦できず、受け身の姿勢になりがちです。
さらに若手社員は苦労したがらない傾向にあります。平成 30 年度 新入社員「働くことの意識」調査結果によれば、好んで苦労することはないという意見が34.1%になっています。
若手社員は、失敗を恐れて、苦労したがらない特徴があり、このままキャリアを重ねていくと企業として組織力低下のリスクがあります。また、外部環境の変化が激しい現代にあっては、既存の製品・サービスだけでは事業が成り立たなくなることも考えられます。つまり新しい価値を生み出せるイノベーションが必要になるのです。
イノベーションを生み出すには失敗や苦労はつきもの。企業が組織力を高めて、生き残るためには、失敗を恐れず挑戦し自ら考えて行動していける自律型人材が求められると言えるでしょう。
若手社員に求められる自律型人材とは何か、主な特徴を説明します。
若手社員に求められる自律型人材として「自ら行動できる」という特徴があります。上司・先輩からの指示を待っているのではなく、自分から質問したり、仕事の役割は何か?と考えたりできる人材です。なお、情報収集に長ける若手社員の強みは、自ら調べて、解決策に繋げることもできるでしょう。
若手社員に求められる自律型人材として「挑戦できる」という特徴もあります。現状維持では成長にはなりません。具体的で達成困難な課題を設定し、挑戦していくことこそ若手社員の成長に繋がるのです。
若手社員を自律型人材に育成するには、企業はどんな施策を講じたら良いでしょうか?育成方法を紹介します。
企業が競争優位に立つには、他社に模倣されない模倣困難性を追求することが重要です。自律型人材の育成は、まさに企業が競争優位に立つための人事戦略です。ただ、闇雲に人材育成を行っても若手社員は育ちません。人材育成を始める前に自律型人材の定義が必要となるのです。
人材をはじめとする経営資源は、企業の経営戦略を達成するために存在しています。ですから経営者や人事部は、企業の経営戦略に繋がる自律型人材を定義し、組織内に浸透させる必要があります。なお、自律型人材を組織に浸透させるためには、以下に説明する「組織風土改革」「人事評価制度」「研修」の3本を並行的に進めていきましょう。
自律型人材を定義した後は、組織風土の改革に着手します。ホームページやWebメディアなどを使って、自社の組織風土を公表したとしましょう。どれほど人材が成長し、業績にも繋がる組織風土を公表したとしても、他社が容易に真似できるものではないですよね。つまり組織風土も模倣困難な要素なのです。
ですから、自律型人材を育成するには組織風土を改革する必要があるのです。出る杭は打たれるような組織風土では、若手社員は言いたいことも言えません。
自律型人材を評価できる人事評価制度をつくっていきましょう。人事評価制度をつくる際には、報酬と連動しない仕組みにすることがベストです。報酬と連動した人事評価制度では、若手社員が達成しやすい目標を設定することになり形骸化を招きます。報酬と連動しない仕組みで、若手社員の自律的行動を評価する制度をつくります。
自律型人材とは何か、若手社員に求められることは何か、自律型人材になるにはどうしたら良いか。自律型人材の基本や求められる行動について、研修を通じて若手社員を啓発して下さい。組織風土改革や人事評価制度と合わせて研修を行うことで、実践的な研修となります。
外部環境の変化に対応するため、若いうちから社員を育成する必要があります。そして育成の要となるのは自律型人材です。自律型人材を育成するためには4つのテーマがありますので、自律型人材の定義を固めたら他の3テーマを並行的に進めていきましょう。