管理職の皆さん、部下の話を聞けていますか?部下の話を傾聴することは、相手との共感性を養い、組織力のアップに繋がります。ついつい自分が話す量が多くなりがちな管理職が傾聴力を高めるにはどうしたら良いのか、教育方法や傾聴力の効果について解説します。
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傾聴力といっても、管理職に必要な傾聴力は相手の話を受動的に聞くことではありません。相手の話をよく聞き受け、自分と相手の間に共感性を養うことが傾聴力に求められています。管理職に傾聴力があることで、部下は安心して話をしようと思います。
仮に、管理職に傾聴力が欠けているとどうなるでしょうか?例えば、上司が傾聴することなく自分の意見だけを押し付けてきたら、部下は委縮してしまい何もいえなくなるでしょう。そうなると報告されるべき問題が早期に共有されないこともあり得ます。「ウチの上司は話を聞いてくれないから」と部下に思われてしまうと、必要な情報が上司に入ってこなくなります。
傾聴力は組織にどれほど重大な影響を及ぼすのでしょうか?営業部の課長Aさんを例に考えてみましょう。Aさんは常に部下と対話をする時間を取っていました。Aさんから話すだけでなく部下の話をじっくりと聞き受けます。指導が必要な場合はコメントしますが、Aさんから「ああしろ、こうしろ」とはいいません。まずは部下に自力で考えさせます。解決方法を考えることが必要な場合は、部下と共に考えるようにしました。
その結果、営業部は自由にものがいえる雰囲気が作られ、問題が起こらなくても自然とAさんの元に情報が集まるようになります。また、目標についてもAさんと部下が一緒に考え、柔軟に変えていくようになったため組織の成果達成度も高まるようになりました。
以上から、傾聴力は、相手の話を受動的に聞くことではないことが分かりますよね。上司・部下間に共感性を作るためには、傾聴力によって自由に発言できる雰囲気を作り、自力で考えさせ、解決方法が必要な時は上司が共に考えてあげることです。柔軟で自由な雰囲気の中で、目標達成も上司と考え、時には変えていけるので組織力がアップするのです。
管理職が傾聴力を高めると、管理職としてのマネジメント力が高まり、部下育成に役立ちます。傾聴力は、部下の話を聞いて上司・部下間に共感性を作ります。先ほどの事例で見たように、自由に発言できる雰囲気を作ったり、自力で考えさせたりするためには強力なマネジメントが必要です。自分の意のままに人を操るのではなく、相手の能力・行動に頼るからです。
相手の能力や行動に頼るというのは、部下に当事者意識が芽生え、行動に結びつかなくてはできません。また、組織に対して貢献する意識・行動も必要です。つまり傾聴力を通じて、上司が部下を育成することになります。部下の意識・行動に当事者意識と組織貢献力を身につけさせるには、傾聴力に基づいた高度なマネジメントが必要になります。
実際に、管理職が傾聴力を実践するにはどういう方法があるのでしょうか?以下の2つの方法を具体的に説明します。
バーバルコミュニケーションとは、言語を使ったコミュニケーションをいいます。つまり言語を使った傾聴力ということができます。上司が部下の話を聞く時、無言で聞いたらどうなるでしょうか?威圧感が出てしまうので部下は緊張してうまく話せないかもしれませんよね。しかし上司が相槌を打ってくれたら、部下は「話を聞いてもらっている」と思うので自然と話せるようになります。
相槌の他には「部下が話したことを確認する」ことも効果的。「今、君が問題にしているのは〇×についてだね」と、会話の合間に確認の言葉をはさむと、部下は「上司が自分のいっていることを理解している」と思うのでスムーズに言葉を継ぐことができます。
また、部下に意見を聞くこともバーバルコミュニケーションでは有効です。「僕はこう思うけど、あなたはどう考えるかな?」と聞いてみて下さい。「僕はこう思うけど」と枕詞を添えることで、違う意見をいっても良いのだと部下に思ってもらえるので、部下は自由な意見を述べることができるでしょう。
ノンバーバルコミュニケーションとは、非言語的コミュニケーションのこと。言葉を使わずに行う傾聴力をいいます。
相手の話を聞く時は場所に気を付けましょう。単純な雑談であればオフィスで話せば良いのですが、部下が問題を起こしてしまったり、集中して会話する必要があったりするなど、会話の内容に応じて会議室に移動して、じっくり会話する機会を捉えて下さい。
どれだけ長い時間一緒に仕事をしたとしても、上司・部下間は緊張するもの。ですので、部下に共感性を持ってもらうため、ミラーリング効果を重視しましょう。ミラーリング効果とは、自分と同じしぐさをする人に好感を持つ心理的効果をいいます。例えば、部下がコーヒーに手を付けたら、上司もコーヒーを飲んでみましょう。すると部下は上司に共感性を持つようになり、徐々に緊張がほぐれてきます。
管理職に傾聴力が必要だといっても、いきなり傾聴力を高めることはできません。管理職が傾聴力を高めるには、会社が研修を行って傾聴力の重要性を訴え、演習を行い、職場で実践することが大切。管理職が傾聴力を高めるための教育方法について具体的に解説していきます。
研修の冒頭では、傾聴力とはどういうものか、ポイントを講義することが重要です。受講生が飽きないように演習をたくさん取り入れることは重要です。一方で、演習の方向性が見えるようにするには傾聴力とは何かが具体的に分かっておく必要があります。傾聴力の意義、組織に及ぼす影響、傾聴力のメリットなどについて解説しましょう。
傾聴力の研修の意義は、職場で実践することにあります。机上の空論ではマネジメントでは役立ちませんから実践あるのみです。職場実践するためには、傾聴力の演習を行うことが効果的です。
まずは職場で部下の話をじっくり聞けるようになるための演習です。上司役が部下役の話を傾聴したあとは、部下役と上司役を交代して、傾聴します。これまで自分の意見を部下に主張し続けてきた上司であればあるほど、傾聴するのに違和感を覚えるでしょう。しかし、傾聴する時の違和感が大事で、違和感を覚えるほど、普段やりなれていない傾聴力を発揮しようとしていることになります。
研修後は職場に戻って部下の話をじっくりと聞いてみます。違和感が継続するでしょうが、部下が自分の意見をすんなりといえるまで傾聴すると、部下は上司との関係に自由さを感じるようになっていくでしょう。
傾聴力を高めるためにはビデオ演習が効果的です。受動的に相手の話を聞くことだけが傾聴力ではありません。バーバルコミュニケーションで説明したように、「相槌を打つ」「部下が話したことを確認する」「部下に意見を聞く」などのバリエーションがありました。話を聞くだけでなく部下に考えさせることも傾聴力の1つです。
傾聴力に慣れないうちは、話を聞くことにばかり重きを置きがちです。研修の中で部下の話を傾聴している様をビデオに撮っておきます。あとで見返してみると、どんなところに傾聴力の問題・課題があるかが分かり職場実践で役立ちます。バーバルコミュニケーションだけでなく、ノンバーバルコミュニケーションにも注意して、ビデオを見ながらセルフフィードバックしてみましょう。
傾聴力とは、管理職が部下の話を聞いて共感性を高め、組織力をアップさせることでした。傾聴力を高めると、マネジメント力が高まり部下育成にも役立ちます。本気で傾聴力を高めるのは難しいのですが、研修を通じて、継続して職場実践に励むことで高めることができます。