新型コロナウイルスの影響によって人材流出が進み、未経験者の選考を行う機会が増加すると思われます。将来を担う優秀な若手人材を獲得するために、ポテンシャル採用の概要やメリットをしっかりと理解しておきましょう。
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ポテンシャル採用とは、採用基準において経験やスキルよりも将来性や潜在能力を優先する採用手法です。
ポテンシャル採用の代表例として新卒採用が挙げられ、長らく日本の雇用制度の中心的な採用手法として実施されてきました。昨今では少子高齢化に伴う「売り手市場」に伴い、中途採用においてもポテンシャル採用が導入され、「第二新卒」のニーズも高まっています。
また、「不況時に新卒採用を見送った」「若手人材の転職者が続いた」など理由から年齢構成に偏りが生じている企業でも、ポテンシャル採用による解消が望まれます。
今後は新型コロナウイルスの影響が深刻な業界で人材流出が進み、他業種への応募が増加するでしょう。すでに2020年8月には、観光業界の人材を農業の現場で受け入れるという試みも報道されています。
参考:観光業界の人を農業現場で受け入れへ JA全農とJTBが提携
採用担当者においては、未経験者の応募増加に伴い、ポテンシャル採用の実施を判断する場面に直面すると思われます。
大企業と比して知名度で劣る中小企業は、有望な新卒者を他社に奪われがちです。その点でポテンシャル採用は、他社でマッチせずに流出した有望な若手人材を発掘できるチャンスとなります。
中途採用では即戦力を求めがちですが、即戦力になり得る優秀な人材は競争も厳しくなります。育成を前提としたポテンシャル採用を検討することで、選択肢は大きく広がるでしょう。
また、中途採用者といえども、前職までの職務に染まりきっていないことから、自社の風土を柔軟に受け入れてくれやすいのもメリットといえるでしょう。
主に第二新卒を採用した際に顕著となるメリットとして、育成コストの削減が挙げられます。
新卒採用では、ビジネスマナーなどの基礎的な部分から研修を行う必要があり、様々な育成コストが発生します。対して第二新卒は基本的なビジネスマナーを身につけている人材が多く、育成にかかるコストの削減につながります。
第二新卒は新卒者との年齢差もあまりないため、中小企業においては一から新卒者を育成するよりも効率的に将来性のある若手を獲得できる採用手法といえるでしょう。
応募者に実務経験を求めない以上、選考では新卒採用のようにコミュニケーション能力や論理的思考力といった人間性にまつわる部分を評価していく必要があります。
前職の業務だけでなく学生時代の経験などからも応募者の資質を探り、応募者の職歴に空白期間がある場合はその間の取り組みについても確認するとよいでしょう。とくに前職の退職理由はしっかりと聞き取り、消極的な退職ではないかなどを確認しましょう。
また、応募者に将来像やスキルアップのイメージがあるかを確認するのも、内面を見極めるうえで有効です。退職理由や将来の展望などから、自社への応募が漠然としたものでなく熱意を持った挑戦なのかを探っていきましょう。
ポテンシャル採用を行う際は、自社に合う人物像や募集職種に求められる資質をまとめたうえで選考を行う必要があります。スキルや経験値といった比較しやすい能力と異なり、内面の優劣は比較しにくいものです。求める人物像や資質を明確にしておかないと、候補者の見極めでぶれが生じる恐れがあります。
また、未経験者の採用で切り離せないリスクがミスマッチです。業務の実態を知りえない求職者からでは、仕事への適正を量りきることができません。企業側が候補者の資質を見極め、ミスマッチが起きないよう判断する必要があります。
選考基準のひとつとして、自社で活躍している従業員の人物像や仕事ぶりなどをまとめ、候補者と比較してみるのもよいでしょう。
実際に採用活動を行う際は、ポテンシャル採用は検討するけれども、経験者が来てくれるに越したことはないという方針を取ることが多いのではないでしょうか。
経験者からの応募も合わせて求めるのであれば、募集要項の表現に気を配りましょう。とくに「未経験歓迎」といった文言は忘れず、未経験者が尻込みしないよう間口を広げていることを明示する必要があります。
また、第二新卒者向けの求人媒体などもあるので、ポテンシャル採用に特化した募集を行う際は検討してみてもよいでしょう。
少子高齢化の影響によって、自社の今後を担う世代の採用はますます競争が激しくなっていきます。しかし、新型コロナウイルスの影響が少ない業界においては、今まさに優秀な若手人材を獲得できるチャンスが訪れているといえます。「若手は新卒採用」「中途採用は即戦力」といった固定観念は捨てて、柔軟な姿勢で人材を獲得していきましょう。