女性管理職は「2020年30%」という目標に対して大きく下回っているのが現状であり、女性活躍推進法などの法整備やSDGsの影響から対策が急務となっています。社内の意識改革や就業規則の整備も必要不可欠ではありますが、中途採用の推進も大きなメリットがあります。
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近年の女性管理職をめぐる動きのなかで基準となるのが、「2020年30%」です。これは2003年に「男女共同参画基本法」に基づいて設定されてもので、2020年までに指導的地位に立つ女性があらゆる分野で30%以上になることを目標としていました。 しかし、帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査(2020年)」によれば、「女性管理職比率」は全国平均で7.8%にしか届きませんでした。※2021年の調査では平均8.9%と微増
また、2020年の厚生労働省「雇用均等基本調査」によれば、女性管理職を有する企業の割合は、係長相当職で18.7%、課長相当職で10.8%、部長相当職で8.4%と、役職が上がるほどに割合が減少する傾向が見て取れます。
業界によっては女性管理職の割合は大きく低下することを踏まえると、30%の目標と乖離しているのが現実です。
2015年には「女性の職業生活における活躍推進に関する法律(女性活躍推進法)」が成立しました。
女性活躍推進法では「社内の女性活躍に関する状況把握」「数値目標や取り組みを含めた行動計画の策定および労働局への届け出」「女性活躍に関する情報の公表」などが求められています。
2022年4月1日からは従業員数101人以上の中小企業まで対象となるため、対象企業は具体的な対策を講じる必要があります。
参考:東京労働局「令和4年4月1日改正女性活躍推進法の義務化について」
近年、2030年までの達成が求められるSDGsや、投資家のあいだで重要度が高まっているESG経営などを受けて、世界規模でダイバーシティ推進の機運が高まっています。
国際的に比べてみると、日本の女性登用は先進国で最低レベルとなっているため、対応が急がれています。世界経済フォーラム「ジェンダー・ギャップ指数(2021年版)」によれば、日本は156カ国中120位ときわめて低い水準です。
まず必要となるのが、社内の女性管理職に対する意識の変革です。
とくに「結婚・出産を機に離職するのでは」「育児中は仕事を二の次にするのでは」といった懸念(バイアス)により、育成や仕事の割り振りに男女差が生じることがあります。
働き手も「期待されていない」と感じれば、キャリアアップに励もうとはしません。まずは経営層や管理職クラスが意識を改め、女性も管理職を目指しやすい空気を醸成することが大切です。
出産・育児などを経ても就業しやすい制度や復職しやすい雰囲気を整備することが大切です。具体的には、フレックスタイムやテレワークの推進、育児休暇の推奨などが挙げられます。
とくに育休は、2021年に改正した「育児・介護休業法」に基づき、男性も積極的に育児休暇を取得することで、社内の認識を改めていくことが求められます。
参考:厚生労働省「育児・介護休業法について」
男女を問わない課題ですが、社内でキャリア開発に向けた研修制度を整え、育成体制を整えることも欠かせません。管理職に必要なマネジメント能力やテクニカルスキルなどを身につけるためには、外部セミナーなどへの参加を推奨するのも効果的です。
また、評価制度を明確化し、男女差を問わない基準で公平に人事評価を行うルール作りも不可欠です。
女性管理職が増えない原因として、そもそも本人が「管理職にはなりたくない」と思っている問題があります。ある調査では、一般社員の8割超が「管理職になりたくない」と回答したという結果が出ています。
さらに同調査の女性の回答を見てみると、「管理職になりたい」と回答した女性の割合は、20代で26%、30代で16%、40代で10%、50代で6%と低水準で、しかも年を重ねるほどに低下しています。
参考:8割超の一般社員が「管理職になりたくない」と回答。その理由とは?
ノウハウのない状態で自社の女性従業員を管理職候補として育成するより、中途採用で人材を確保するほうが効果的な場合があります。
女性管理職を中途採用する大きなメリットは、管理職への意欲が明確な人材を確保できることです。
社内で意見を聞いても、なかなか表立って「管理職にはなりたくない」とは言えません。意欲が低いまま周囲の後押しで管理職に就いてしまうのは、会社・本人にとっても良いことではありません。その点で中途採用での募集は、管理職としての明確な意思がなければ応募して来ないため、意欲の高い人材を確実に登用できます。
中途採用で女性管理職を採用することで、社内のロールモデルとして従業員に示せます。この場合、他社で管理職の経験のある人材を採用できれば、より効果的です。
女性が管理職を敬遠するのは、ロールモデルがいないことが原因の一つという指摘があります。具体的にどのような立場を担うのか示せる人がいれば、不安は解消されるはずです。また、憧れを抱くような人物を登用できれば「あとに続きたい」と考える従業員も増えるでしょう。 社内に女性管理職を根付かせる先駆者と考えれば、単に「管理職を採用する」以上の価値があるというわけです。
2022年4月1日より「女性活躍推進法」の対象企業が従業員数101人以上の中小企業まで拡大します。各企業は、行動計画の策定等の対応に迫られていることでしょう。
一方で、そもそも女性管理職の数自体が少ないことから、育成ノウハウを有している企業は少なく、計画の策定は容易ではありません。その点で、女性管理職の中途採用は、課題解決の有力な施策となるでしょう。