中小零細企業における採用活動は年々難しくなる一方、企業が求めるのは「即戦力・優秀な人材」であり、採用競争は激化の一途を辿っています。そこで必要となるのが「自社にとって優秀な人材」の発掘。求める人物像の厳選と採用市場の見極めで、採用活動を見直しましょう。
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総務省「労働力調査年報」によれば、労働力人口は2016年時点で6,648万人だったのに対し、2065年には3,946万人と4,000万人を割ると推定されています。
このような顕著な労働力人口の減少は、すでに中小企業の採用活動にも暗い影を落としています。
コロナ禍に揺れる前の2019年3月卒業予定の大卒求人倍率は、1.88倍。全国民間企業の求人総数が81.4万人だったのに対し、学生の民間企業への就職希望者数は43.2万人でしたので、約38万人の人手不足となります。
従業員規模別に見ると、従業員数300人未満の企業では9.91倍。2018年の6.45倍から大幅に上昇しており、過去最高の数値となっています。これは、中小企業は約10社で一人の学生を奪い合っていることを意味します。
社会構造の変化から人口減に突入している以上、人手不足の改善は数十年単位で見込まれません。今後は、いかに求職者から選ばれる企業となるかが重要になるわけです。
中小企業においては定期的な採用活動を行わず、欠員補充の際などにスポット的に中途採用を実施するという企業が多いでしょう。
しかし「活発な採用活動を行わない」「専任の採用担当者がいない」といった企業では、採用活動におけるノウハウが蓄積されません。
採用競争が激しさを増すなかでノウハウがないままでは、ますます人材獲得が厳しくなっていきます。
実際、2019年にリクルートワークス研究所が実施した「中途採用実態調査」によれば、2019年下半期に「中途採用を実施した、または実施中の企業」で「必要な人員を確保できなかった」と答えた企業は約41%に上っています。
従業員数300名以下の会社経営者を対象に「中途社員に期待することは」と質問したところ、「即戦力となって活躍してくれること」が52.4%と半数を超えたという調査があります。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000048502.html
ここまで解説してきたとおり、中小企業においては人材の獲得すら難しい状況が続いています。そのなかにあって「即戦力になり得る優秀な人材」を採用するのは、非常に難しいことです。
こうした採用目標と社会情勢の乖離は、採用活動を困難にする一因となります。
中小企業にとって優秀な人材・即戦力人材の獲得は難度が高く、闇雲に採用活動を続けて採用できるものではありません。
そこで改めて考えるべきなのが「自社にとって優秀な人材」という存在です。
採用活動において、求める人物像として「即戦力人材」「優秀な人材」と表現するのは抽象的といえます。
例えば「将来を見越し、経営層になり得る人材」と「採用翌日から現場でバリバリと活躍できる人材」とでは、必ずしもイコールにはなりえません。前者ではマネジメントスキルが不可欠ですが、後者は自己完結型で業務にあたる人材でもよいからです。
また、同じ「即戦力」でも、現場担当者は「明日から活躍できる人材」と考える一方で、経営層は「3カ月後に一部署を任せられる人材」と考えている場合があります。同様に、自社の業態や、社内でも配属する部署によって「優秀」の定義は異なるはずです。
一口に「即戦力人材」「優秀な人材」といっても、なにをもって優秀と見るかが重要なのです。
待遇やネームバリューで劣る中小企業が、あらゆる面で優秀な人材を採用するのは難しいでしょう。中小企業が採用活動において大切にすべきなのは、「自社にとって優秀な人材」という考え方です。
具体的には、求める人物像・スキルのなかから自社が最も必要とする人柄・スキルを抽出して、その一点がマッチする人材を選考します。まずは多くを求めすぎず、これだけは譲れないという部分を検討してみましょう。
採用活動において何を重要視するのか明確にし、優先順位をつけたうえで選考することが大切です。
例えば、以下のような選考基準が挙げられます。
こうした選考基準は、経営層と現場で求める人物像をすり合わせて構築することが大切です。
選考基準を構築する際、求めるスキルや経験が採用市場においてどれだけの希少さなのかを把握しておく必要があります。
例えば、欠員補充を目的として、退職した従業員と同様の経験・スキルを持つ人材を求めたが、採用活動が全くうまくいかなかったことはないでしょうか。この原因のひとつとして、実は業界での経験を持つ人材は希少であり、用意した待遇と市場の相場が乖離していることが挙げられます。
自社内では高望みをしていないつもりでも、採用市場からみればハイスペックな人材を求めているということが往々にして起こりえるのです。
自社にとって優秀な人材は、同業他社にとっても等しく求められる人材である可能性が高いでしょう。
やはり最後は、求職者から選ばれるための努力も必要となります。とくにネームバリューで劣る中小企業は、しっかりと自社の魅力や雰囲気を伝えてアピールしなければなりません。
しかし、求人媒体での限られたスペースでは、そのすべてを伝えるのは困難と言わざるえません。自社採用サイトを通して、継続的に求職者へ自社のことをしっかりと伝え、他社との差別化を図りましょう。